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『日本美術の歴史 補訂版』を読む記録(0)

「まえがき」を読んだけど、いいことしか書いてないな、ということ。

記録:関谷武裕
読んでる本『日本美術の歴史 補訂版/辻惟雄』(東京大学出版会)

2024年1月19日

『日本美術の歴史 補訂版』を読む記録(0)

どうやったら時間かけずにブログ書けるかチャレンジしてみます。60分でかけたらいいんだけど。

前回の『日本美術の歴史 補訂版』を読む記録(−1)からの続き。今回は「まえがき」のみ読みました。

これから日本美術の流れに沿って縄文から現代までを辿っていきますよということのお知らせから始まり、絵画、彫刻、工芸、考古、建築、庭園、書、写真、デザインなど多岐にまたがる美術の全体の流れとその輪郭を一人で把握するのは至難のわざなんだけど、70歳を過ぎた今が最後の機会でもあるからやるという、めっちゃ気合い入った導入。気合いというか気迫か。
この本の初版は2005年で、1932年生まれの辻さんは現在91歳。

ところで「美術」とはいったいなにか?

という問いから始めてくれるのがまた嬉しい。操られる言葉に対して当たり前に誠実なのがいい。
優しい「まえがき」。

「美術」とは、明治のはじめ、西洋のfine artを日本語に訳して出来たものであり、それ以前からあった概念ではない。それに類する言葉としてartに対する「技芸」があげられる程度だろうか。

これについては僕も同様の認識をしていますので、それは確認しました。どうぞ続けてください。

絵画と書は「書画」として一緒になっていた。彫刻という言葉も、稀に使われているが、今と同じ意味を持っていたかはさだかでない。工芸は絵画・彫刻とともに「工」すなわち物を作ること、または作る人、の概念に収まっていた。陶工、織工、漆工、画工、彫工といった具合に、である。建築、庭園も明治の新造語である。
「美術」は、その他もろもろの文化・学術の用語とともに西洋生まれの概念にほかならない。だが「日本美術」といった場合、その中味は国産品である。江戸時代までの国産の「もの」のなかから、明治の為政者が何と何を「美術」に選んだかの問題がそこに生じる。

「書画」というのはあまり身近でなく、書と画が一緒になるというのは画材が共通していたからなのか、グラフィックとして同じものとして扱われていたのか? よくわからない。
美術も工芸も建築も庭園も明治以降の新しい言葉で西洋発の概念だということが改めて整理されてます。そして「日本美術」というのは、ただ江戸までの国産の「もの」で、その時点で美術の概念に該当しないと判断された「もの」が当然あって漏れちゃってるものもあるんだよって話。
これは現代の「美術」においても常に漏れ続けているものがある気がします。何が「美術」かを為政者が選ぶってところも非常に味わい深い。。

そのあと辻さんは自分が企てた日本美術史を一人で書き下ろすという無謀(自らの中に事前に用意された日本美術史観が現れてしまうこと)について前提しつつ、国粋主義的な見方に与せず「いかなる国家や民族の美術も孤立した現象ではありえない」というフェノロサの言葉を引用してスタンスを表明してくれます。
ありがとうございます、辻さんがどういうつもりで書かれていくのかどんどん理解できています。

縄文時代はさておき、以後の日本美術は、水源地である中国大陸から直接に、あるいは朝鮮半島というパイプを通じて、絶えず水の恩恵を受けてきた農園であり、与えられる水の質と量に応じて収穫物も絶えずその性質を変える。それならば、日本美術に一貫した自律的展開はないのか? この疑問にぶつかったとき、愛読するウオーナの『永続する日本美術』の序文のつぎのくだりをわたしは思い出すことにしている。
(日本美術の)変化のあわただしさは、私がいつも感じていることを強調するように思われる。それは消えたかと思うとまた不意に、新しいがそれとわかる、別の流儀(fashion)であらわれ、前にそれが別の気分(mood)でそこにあったことを確信させるところの、日本美術の永続的(enduring)な傾向である。

予め想定される読者の疑問について回答してくれます。なんかそれこそY2Kみたいな話に聞こえる。前と似たファッションだけど気分は違ってる。

外来美術の影響下に目まぐるしく装いを変えながらも、その底にいつも変わらずあり続ける日本美術の常数――日本美術史を学ぶものにとって、これこそ見つけ出したい「火の鳥」だろう。

そうなんです!「火の鳥」!日本美術の常数を認識した上で見る漫画!はやく「火の鳥」が見えるようになりたいです、辻先生!

あと1ページで「まえがき」は終わり。
辻さんは日本美術の特質とはなにかを課題にしてこられたとのことで、まさに僕がいま知りたいことなんだけど、その特徴は三つあるとのこと。
第一に「かざり」
第二に「あそび」
第三に「アニミズム」

これ、なんか直観的に僕わかっちゃうかも。ピンときちゃうかも「火の鳥」。でも「かざり」「あそび」「アニミズム」の具体的な内容が想像できないし言語化出来てないから、次回から本編でご教授のほど、よろしくお願いいたします!

ここまで集中して100分くらい。画像とか用意しないで、公開されたときのレイアウトとか気にしないで公開するのでも時間かかる。。

[近況]
昨日、なにかで見て急に岩波書店が出版する雑誌「世界」2024年2月号を読みたくなって、会社から一番近い書店の教文堂に閉店間際に駆け込みました。西村ツチカさんが描くクマが雑誌キャラクターとして登場してます。「リベラルに希望はあるか」「受験という迷路」という2つの特集のチョイスが、子供を育てながら社会人として暮らす僕個人がほんのり関心の持っていることにピッタリしてる。今一番聞きたいラジオ番組みたいな感じ、Podcastもちょっと聴くの疲れちゃったし。他には雑誌『広告』Vol.417 特集:文化の号をちまちま読んでるんだけど、『日本美術の歴史』との併読がまたいい感じで。
漫画は ふぢのやまいさんのブログにあげられた2023年みんなのマンガベスト10記事を参考に読んでます。

『日本美術の歴史 補訂版』を読む記録(0)

2024年1月19日

記録:関谷武裕
読んでる本『日本美術の歴史 補訂版/辻惟雄』(東京大学出版会)


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